成人と思春期の性同一性障害者へのホルモン療法

Principles of Transgender Medicine and Surgeryのホルモン療法に関する部分翻訳することにしました。
10回ぐらいで終了?


成人と思春期の性同一性障害者へのホルモン療法

はじめに
この本で既に述べたように、性同一性障害は、表面上では正常な身体的な性的分化をした人が、自分は反対の性別に属していると確信する状態のことだ。この確信は、望む性別で、ホルモン的にも、解剖学的にも、法的にも、心理学的にも、暮らしたいという、我慢できない欲求が伴う。この章では性同一性障害のホルモン量の原則について記す。


治療の一般原則
性同一性障害者に反対の性ホルモンを投与することは、内分泌学的視点からは、正統的ではないように見える。投与方針の根拠は、ホルモンの過剰や欠乏といった、内分泌学的見地に基づくものではない。それゆえ、ホルモン療法に関しては、同意するものが増えているものの、慎重であるべきだという意見も専門家の中にはある。投与方針は、内分泌学的見地の代わりに、心理的評価の結果によるものだ。心理的評価が結論づけるのは、性別再指定(sex reassignment:ホルモン療法や、乳房切除術、SRSといった身体治療)は、性別違和、すなわち、時に「まちがった体に閉じこめられた」としばし表現される極端な感情、に苦しむ人に、苦痛の緩和をもたらす。ホルモン療法は心理専門職により推薦されるが、治療の実際の責任を持つのは、処方する医師である。処方医は、心理専門職と緊密な協力関係を維持することが重要である。医療従事者は、性同一性障害の専門家の国際組織であるHBIGDAの作成した、スタンダードオブケアを遵守することが推奨される。
スタンダードオブケアの主目的は、性同一性障害の心理学的、内科的、外科的な処置に関する、HBIGDAの専門家たちの合意を明確に述べることだ。スタンダードオブケアは、この領域に関する、世界中の専門家たちに治療指針を与える。専門家たちの多くは、内科学や内分泌学の、主流から遠くはずれ、孤立の中、働いている。スタンダードオブケアは、法医学的問題において、専門家としての基準をはっきりする必要に迫られたときにも有用だ。性同一性障害者やその家族、あるいは団体も、この分野における専門家の最近の理解を知りたくなったとき、スタンダードオブケアを利用することができる。ホルモン療法や外科的療法を始める前に、医師はこれから述べる事がらについて、患者と話し合う必要がある。