「1Q84」読み終える。
いろいろな切り口での感想が可能だが。
アマゾン書評とか見ても、ジョージ・オーウェルの「1984」との対比は乏しいので、その線で。
1.「1984」は全体主義と戦うが、「1Q84」は自分自身との戦い。
1Q84でも、確かにオウムとか、ヤマギシズムとか、エホバの証人らしき物が出てくるけど。
あまりメインテーマとも思えず。主人公たちはもっぱら、自分自身の生育史的トラウマと戦っているように見える。
2.「1984」は理性的思考が抑圧され、本能的になっているが、「1Q84」では、理性や意識により、無意識が抑圧されている。
1Q84で、興味深いのは、過去の固着的欲求ないし無意識的願望を、自分自身が抑圧している。いいかえるなら、1984では意識が抑圧され無意識的になり、1Q84では無意識が抑圧され意識的になっている。
3.しかしながら「1984」も「1Q84」も過去の記憶を取りもどしていく中で、恋愛感情がより強いものとなり、最終的には弾丸が体を貫くことで、その恋愛は成就する。
といった感じで、それなりに面白かった。
あと、勃起も村上春樹が書くと、こうなるのか、さすが、と思ったのでメモ。
Book2 P299
>天吾のペニスは背中を指でとんとんとつかれ、泥の中での穏やかな眠りから目覚めたようだった。それはひとつあくびをし、そろそろと頭をもたげ、徐々に硬度を増していった。そしてやがて、まるでヨットが北西の方向から吹いてくる確かな順風を受けてキャンバスの帆を張るように、留保のない完全な勃起に至った。その結果、天吾の硬くなったペニスは否応なく、ふかえりの腰のあたりに押しつけられることになった。

- 作者: 村上春樹
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