「性同一性障害」ドラマ化

http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/tv/20090604et05.htm
性同一性障害」ドラマ化
WOWOW実話を基に理解促す試み
 心と体の性が一致しない性同一性障害者を題材にしたオリジナルドラマ「ママは昔パパだった」(日曜午後10時、全6回)が8月23日から、WOWOWで放送される。戸籍上の性別変更を規定する性同一性障害特例法改正にまつわる実話がモチーフ。性同一性障害を抱える人々を取り上げたドキュメンタリーも連動させ、この問題への理解を深める試みも行う。(辻本芳孝)

 2004年に施行された性同一性障害特例法は、〈1〉20歳以上〈2〉未婚〈3〉性別適合手術済み〈4〉子供がいない――の4条件を満たせば、戸籍上の性別変更を認めていた。08年6月、〈4〉を「未成年の子がいない」と改正した。

 ドラマでは、特例法改正前、性別適合手術を受けたが、2人の息子がいるため戸籍上は男のままの小谷仁美(戸田恵子)が主役。雑誌でそれを暴露され、解雇された仁美は隣人の有馬(吉田栄作)や元妻の牧子(余貴美子)らに支えられ、法改正への活動を始める。

 妻が授乳する姿を見た時に夫が違和感に耐えられなくなる場面などは、性同一性障害者や関連団体らに脚本の大石静やスタッフが取材した実例を基にした。

 大石は「心と肉体の性別の不一致がいかに人間にとって悲しいか具体的に知り驚くことが多かった。それを癒やし、克服する力を描きたかった」と語った。

 また、このドラマの放送に先立ち、8月15日午後4時30分から、関連のドキュメンタリーを放送。実名を出して法改正に向けて活動していた水野淳子さんが、活動への経緯や2人の子供を育てた日々などを振り返るほか、ドラマ化にあたって取材した人々の姿を紹介する。


 そもそも、なぜ元の性で異性と結婚した上で違和感に耐えられなくなるのか。

 「性同一性障害をかかえる人々が、普通にくらせる社会をめざす会」の山本蘭代表によると、以前から悩んでいても、親など周囲の期待があり、無理して結婚や出産をする。しかし、配偶者によって、心の中に潜む性を刺激されるケースを重ね、「バケツに水がたまるように」違和感が高まり発症に至るという。

 同会の調査では、08年までに特例法に基づき1263人が戸籍の性別変更を認められている。ただ、07年度の日本精神神経学会の調査では、国内に7000人以上の性同一性障害が確認されているが、子供がいる約500人のうち、法改正の恩恵を受けたのは50人程度という。

 山本代表は「今でも誤解や偏見を恐れ、性を変えたことを隠して生きている人がいる。就労問題などまだ問題も多く、ドラマが偏見の解消につながることを期待したい」と語った。

(2009年6月4日 読売新聞)