性同一性障害の写真展は不適切? 立命大と学生対立

2009.2.3朝日
http://www.asahi.com/national/update/0203/OSK200902030027.html
性同一性障害の写真展は不適切? 立命大と学生対立
立命館大京都市北区)で性同一性障害に関する写真展をめぐって論争が起きている。院生が開いた写真展を大学側が「公共の場にふさわしくない」と撤去したのが発端だ。院生は「見たくなくても見なければいけない現実はたくさんある」と譲らず、指導教官と大学側が3日、会合を持ち、打開策を探る予定だ。

 写真展を主催したのは院生のプロジェクト「クィアスタディーズ研究会」で学外の研究者らも協力した。研究会は「身体と性――この曖昧(あいまい)な点と線」のテーマで1月19日、学生ラウンジ2カ所に、性同一性障害と診断された院生らが裸でポーズをとった写真計約90枚を展示した。

 女性の体で生まれ、性同一性障害と診断された先端総合学術研究科博士課程2年の吉野靫(ゆぎ)さん(26)も、裸で立つ連続写真を出展した。大学病院で受けた乳房切除手術の跡がケロイド状になった胸に黒いスプレーをかけて強調している。

 展示は同30日までの予定だったが、大学側は「不特定の学生が出入りする場所でショッキングな展示はふさわしくない」として、23日までに写真を撤去してしまった。

 吉野さんは「不都合なことにふたをせず、考えさせることこそ大学でやるべきことだ。展示は自分の身体を積極的に愛し、受け入れるための自分なりの表現方法だ」と、大学側の対応を批判する。

 研究会は、撤去を「研究する権利や表現の自由を著しく踏みにじる行為」とする抗議文をラウンジに張り出すとともに、25日に同大学で開いたシンポジウム「ナルシストランス宣言」の会場で撤去された写真の一部を掲示した。

 大学側は「研究プロジェクトということで会場の使用を認めたが、実際にどんな写真が展示されるか確認していなかった。場所や見せ方を変えて再度、開催できないか話し合いたい」(広報課)としている。(小林正典)

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 ■性同一性障害GID) 心と体の性が一致せず、社会的・精神的に困難を抱えている状態。04年に性同一性障害特例法が施行され、外見を心の性と一致させる性別適合手術を受けた独身の成人は、一定の条件を満たせば、家庭裁判所の審判を経て戸籍上の性別を自分が望む性に変えられるようになった。