第169回国会 法務委員会 第9号

鳩山法相、良いこといってるけど「性同一障害」といってるのが玉に瑕。


http://www.dai5.jp/cgi/kokusei/blog.cgi/permalink/20080522165935
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/169/0003/16905080003009c.html
第169回国会 法務委員会 第9号
平成二十年五月八日(木曜日)


○委員長(遠山清彦君) 法務及び司法行政等に関する調査を議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
松浦大悟君 おはようございます。民主党・新緑風会・国民新・日本の松浦大悟でございます。
 こちらの会派に入らせていただいて初めての質問となります。今日はどうぞよろしくお願いをいたします。
 まず、法務省に伺いたいと思います。
 法務省は人権問題を所管されておられますが、法務省の人権問題に対する役割の確認をさせていただきたいと思います。
○政府参考人(富田善範君) 法務省の人権擁護機関は、国民の間に広く人権尊重思想が普及徹底するよう各種の啓発広報活動を行うとともに、具体的な人権に関する相談や人権侵犯事件の調査、処理を通じて被害の救済及び予防を図る役割を担っております。
松浦大悟君 法務省が人権問題を啓発するために行っている人権週間などでは強調すべき主な人権問題がうたわれているというふうに聞いております。どのようなものか、簡潔に教えてください。
○政府参考人(富田善範君) 法務省の人権擁護機関では、平成十九年度の第五十九回人権週間において、女性の人権を守ろう、子どもの人権を守ろうなどと並んで、性的指向を理由とする差別をなくそう、性同一性障害を理由とする差別をなくそうなどを強調事項に掲げ、性的指向や性同一障害を理由とする偏見、差別をなくし、理解を深めるための啓発活動を実施しております。
松浦大悟君 では、法務省といたしまして、企業が人権侵害をした際にどのように指導を行うのか、またどの程度行っているのか、教えてください。
○政府参考人(富田善範君) 法務省の人権擁護機関では、人権相談などを通じて企業による人権侵害の疑いを認知した場合は、人権侵犯事件として速やかに調査を開始し、両当事者のあっせんをしたり、調査の結果、人権侵害の事実が認められれば、当該企業に対し勧告や説示等、当該事案に即した適切な措置を講じているところでございます。
松浦大悟君 では万が一、例えば人権週間でもうたわれている、被差別部落は有害だと、あるいは障害者は有害だということを言っているような企業があったとした場合に、法務省としてはこれは指導を行うということでよろしいでしょうか。
○政府参考人(富田善範君) 具体的な事案を検討してみる必要がございますが、それが具体的な特定の国民に対する人権侵害であるという場合には、先ほど申し上げましたような説示、勧告等の措置をとります。また、それが差別を助長する行為であると認定した場合にも、例えばインターネット上の記載であればその削除を要請したりといったような活動をしております。
松浦大悟君 では、万が一に、同じく人権週間でうたわれている、性同一性障害は有害だだとか同性愛は有害だというようなことを言っている企業があるとするならば、法務省としてはこれも指導を行うということでよろしいですね。
○政府参考人(富田善範君) 一般的な発言が直ちに人権侵害に当たるかどうかということについては、それは具体的に検討してみないと申し上げられないところがあります。具体的な差別が生じるおそれがあると認められる場合にそういう指導を行うということでございます。
松浦大悟君 何が言いたいかといいますと、実は現在、携帯電話会社各社は、子供に対して違法、有害なサイトから子供を守るためとしてフィルタリングサービスの提供を行っています。有害サイト規制については去年十一月の当委員会においても少し質問させていただきましたけれども、去年の十二月に増田総務大臣の要請によりまして、未成年者の携帯には原則これが適用ということになりました。また、民主党でも、私も議論に参加させていただいているんですが、フィルタリングについての法制化を検討しており、また与党でも法制化を検討していると報道で聞いております。
 このように、現在、急速に未成年者の携帯電話へのフィルタリングの適用が進んでいるのですが、実はここで一つ指摘しておきたいことは、現在のフィルタリングの一部が性同一性障害者や同性愛者といったセクシュアルマイノリティーの人権を侵害しているということなんです。
 どういうことかといいますと、携帯電話会社四社のうち大手を含め二社では、フィルタリングで排除するカテゴリーにライフスタイルというのを設けているんです。このライフスタイルというのがどういうものかといいますと、ゲイ、レズビアントランスジェンダー、いわゆる性同一性障害などの生活スタイルに関する各種情報の提供ということになっているんですね。
 このフィルタリングというのがどういうものであるかというと、説明のところには、有害サイトなどへのアクセスを制限というふうに掲載されています。つまり、性同一性障害は有害なので排除をすると、同性愛は有害なので排除をするというふうに受け取られても仕方がないわけです。
 ここで一つ、誤解されるとまずいので付け加えさせていただきますが、同性愛のポルノは、これはアダルトカテゴリーの中に入ってアダルトとして規制の対象になっているんです。ですから、私、今言っているのはポルノの話ではありません。同性愛の十代の子たちを支援するNPOのサイトであったりだとか、あるいは一般の同性愛者の方たちが、何月何日どこどこ公園に何とか君とデートに行ってきましたというような日記サイトであったりだとか、そうした健全なサイトさえも今、有害サイトとして規制の対象になっており、見られない状態になっているんです。私は、これは人権上非常に問題があるのではないかというふうに思っています。
 民間企業であるとはいえ、今や携帯電話会社はかなり公共性の強い事業であり、社会的影響の大きさからいってかなり問題のあるやり方ではないかというふうに思うのですが、法務省としてこうした企業に対し指導すべきだと思いますが、その辺りのお考えをお聞かせください。
○政府参考人(富田善範君) 携帯電話事業者が提供しているフィルタリングサービスによって排除されるものの中に同性愛や性同一障害に関するウエブページが含まれているということでございますけれども、それにつきましては、業者がどのような内容に関する事項についてどのような趣旨で排除しているかなどの詳細は現在のところ承知しておりません。
 先ほど申し上げましたように、具体的なサイトにつきましてフィルタリングで排除されたウエブページの管理者等が人権侵害であるとして携帯事業者等を相手方として親告した場合には、その内容につきまして検討をし、その理由等を調査した上で、それが人権侵害に当たるかどうか、適切な措置を講ずることになると考えております。
松浦大悟君 私が今申し上げているのは、同性愛や性同一性障害そのものがカテゴリーとして排除をされているということ自体が差別であるということを申し上げているんです。
 例えば、松岡先生は被差別部落の問題について長年取り組まれてこられました。このフィルタリングに被差別部落が排除の対象となっていた場合に、これは差別だと怒りますよね。今野先生はクルド人の問題についてこの委員会で取り上げました。クルド人についての情報がフィルタリングサービスによってすべて排除されているとすれば、これは差別だというふうに怒りますよね。これと同じなんです。同性愛がカテゴリーとして排除をされている、これを差別と認識しない人権擁護局というのは何なんでしょうか。答弁をお願いいたします。
○政府参考人(富田善範君) このインターネット上の違法・有害情報に対するフィルタリングの在り方につきましては、現在、総務省のインターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会において検討されていると承知しております。
 私どもが承知している限り、このフィルタリングを利用するかどうか自体をこれを利用者の選択に任せる、どのようにやっていくかといったようなことも含めて検討されると承知しておりますので、そのような形が直ちに一概に人権問題になるということにつきましては、具体的な事案を見てみないとまたそこは申し上げられないということでございます。
松浦大悟君 今この審議は、インターネットテレビを通じて全世界に流れているんです。これが日本国の人権擁護局の態度だということでよろしいんでしょうか。カメラがあなたをとらえているんですよ。今の発言を全世界に流しているんです。同性愛を排除していることが差別である。今現在においてそうなんですね。将来この企業がどういう対応を取るとかそういう話ではないんです。今現在において人権擁護局はどう対応を取られるのか、それを伺っているんです。お答えどうぞ。
○政府参考人(富田善範君) 先ほど申し上げましているように、差別的取扱いに当たるのかどうか、あるいは差別助長行為に当たるのかどうかということは、具体的事案においてどういう理由でどういうふうな形でそのサイトが見られないということになるかによって異なってまいります。
 したがいまして、それが、保護者がそのフィルタリングを選択して子供に見せていないのかどうかといったようなことも含めて検討しませんと、そこを一概に人権問題、人権侵害であるということは言えないと考えております。
松浦大悟君 女性がカテゴリーとして排除されていたら、これは差別ですよね。お年寄りが排除されていたら差別だと私は思うんです。同じことなんです。
 大臣、今のこのやり取りでお分かりになったとおり、この国のセクシュアルマイノリティーに対する偏見というのはかなり根強いものがございます。こうしたセクシュアルマイノリティーを排除するような思想を人権擁護局そのものが持っているということ自体が私は問題だと思いますが、大臣はこうした根深い偏見をいかに取り除いていかれるおつもりなのか、所見をお伺いしたいと思います。
国務大臣鳩山邦夫君) 本来、男性と女性が引き付け合い、雄と雌がそれぞれフェロモンで引き付け合うというのが自然界の当たり前の現象ではありますが、実際に同性愛とか性同一障害の問題がございますね。
 これは、性同一障害と戸籍の関係で子供がいてはいけないとかという随分議論が今進んできているようでございますが、実際に同性愛の方がおられ、性同一障害という、障害という言い方は何かかわいそうな気がしますね。何か、あなたは今セクシュアルマイノリティーとおっしゃったけれども、むしろそういう言い方の方がいいので、性同一性というのは障害なのか、むしろ当たり前の、ややマイノリティーではあるけれども、当たり前の何らかの発現なんだろうと、そう思うわけですね。
 そうしますと、同性愛の方や性同一云々の方の人権というのも、それは立派に守っていかなければならない。松浦さんが先ほどからおっしゃっていることの論旨は、私は決して間違っていないと思います。ただ問題は、そのフィルタリングして有害情報を排除したいというのは国民全体の願いだろうと思います。むしろ、だから性同一障害とか同性愛というのはおかしいんだ、おかしいんだというめちゃくちゃな書き込みがあれば、そういうページこそ本当は除外をしたいということですから、あくまでも中身の問題ということになるわけでしょうが。
 今後フィルタリングの問題が本格化してくる。現在総務省で、今年の秋までにはインターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会が結論を出そうとしている。その結論を受けて携帯電話やインターネットの会社に対してどういうフィルタリングを求めていくかということになっていくんだろうと、こう思います。ただ、そういう中で、性同一の問題あるいは同性愛の方々の問題を、これは明示的にフィルタリングするようなことがあれば、これはあってはいけないことでございますから、人権擁護の観点で我々は物を言わなければならないだろうと。それは、人権局長はなかなか苦しい答弁をしておりますけど、私はその辺はある程度は割り切ってもいいのではないかと、こう思っております。
 ただ、内容が問題ですからね、本当は。内容は一つずつ本当は大問題なんだけど、一つずつフィルタリングするということはこれは絶対不可能ですから。そう考えた場合に、一つの概念として性同一の方の情報をフィルターに掛ける、あるいは同性愛の方々のことをフィルターに掛けるということは基本的にはあってはならないことと思っています。
松浦大悟君 今、性同一性障害の方のお話が出ましたけれども、十代のこうした性的マイノリティーの方たちの自殺率というのは非常に高いんですね。性同一性障害の十代の子が二十歳になったら個別の性別の変更ができるということで、何とかその日まで一日一日生き延びていこうということで、そういうNPOのサイトを見ながら自分を鼓舞しながら一生懸命生きている、そういう姿を応援していきたいんです。
 私は、保守であればこそ、こうした人たちを困っている国民の一人として応援していくべきだというふうに考えています。そうした観点からも、是非こうしたフィルタリングで性的マイノリティーを排除している会社に対しては指導していただければというふうに考えています。
 五月十七日、来週の土曜日ですが、国際反ホモフォビアデーなんです。これはIDAHOと言われていますけれども、五月十七日は同性愛が病気じゃなくなった日というふうに言われています。WHOの精神疾患のリストから同性愛の文字が消えた日なんです。これ消えたのが実は一九九〇年、つい最近のことなんです。私たちの一つ一つの活動がこうした差別からマイノリティーの人たちを守っていくことにつながっていくのだということを強く訴えさせていただきたいと思います。