性同一性障害 受診者7割「自殺考えた」 岡大院・中塚教授ら調査

朝日新聞 岡山
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性同一性障害
2008年01月15日

■受診者7割「自殺考えた」 岡大院・中塚教授ら調査


 自分の体と心の性別が一致しなかったり違和感を感じたりする「性同一性障害」を訴えて岡山大病院(岡山市鹿田町2丁目)を受診した661人のうち、約7割の人が自殺を考えた経験のあることが、同大学院保健学研究科の中塚幹也教授(生殖医学)らの調査でわかった。自殺を考えた時期については、中学生のころと大学・社会に出てからの二つのピークがあることも明らかになった。


 調査は、同病院に1994年から06年夏までに受診した人を対象に、性に違和感を感じ始めた時期、自殺未遂・自傷行為の有無などを調べた。内訳は、体が男性なのに自分は女性だと思っている「MTF」254人、体が女性なのに男性だと思っている「FTM」407人。


 自分の性に違和感を自覚し始めた時期は、就学前が過半数の52%、小学校低学年16%、同高学年12%。とくにFTMの人は早い時期から違和感を感じる傾向にあり、68%が就学前と回答した。


 不登校があった人は全体の24%、自殺を考えた経験は69%もおり、自傷・自殺未遂をした人も21%いた。


 自殺を考える気持ちが強かった時期は、中学校が37%、大学・社会に出てからが33%と多く、ほかは小学校13%、高校9%など。中学校では二次性徴や制服、大学・社会では恋愛問題や社会への不適応が主な原因として挙げられた。また、いじめで自殺を考えたとする回答も19例あった。


 不登校があった時期は、中学校が37%と多く、高校31%、中学・高校8%と続いた。


 調査結果に中塚教授は「学校で児童・生徒が相談しやすい態勢を整えることが必要だろう。また、子どもから言い出せない場合が多いと思われるので、教員に性同一性障害に関する正しい理解を得てもらい、早く子どもの性別への悩みに気づくよう、子どもの遊びや会話の中で留意すべき項目のリスト作りを進めたい」と話している。


 また、中塚教授らは、臨床心理士を含めたチームで、性的な自己形成過程などを探る新たな調査を今年スタートさせる。同病院で定期的に診察を受ける300〜400人を対象に、生い立ち、性同一性障害が職場や家庭でどのように受け取られているか、自助グループの支援を希望しているかどうか、などを尋ねる。一部の人には時間をおいて同様の質問をし、状況や意識の変化についても調べる。将来、臨床心理士らによる支援を進める際の資料にするという。