「隠されたジェンダー」拝読。
原著の「gender outlaw」はその昔読んだ記憶はあるのだが、芸術的な文章・構成で今ひとつ理解できなかった。
それが今回、筒井真樹子氏のみごとな日本語訳で、全貌が理解できた。
http://homepage2.nifty.com/mtforum/bornstein.htm
私の理解としては、性別二元性から抑圧されると同時に性別二元性に依存する、トランスセクシュアリズムに対して、ジェンダーを流動的でかたちのないものととらえることで、ジェンダーおよびトランスセクシュアリズムに関する言説に新たな視座を与えたものだと思う。
読みながら、福岡のGID研究会で、ご当地の黒田如水にちなみ、「identityは如水のように、水のごとく、形のないというものも素敵である」という話をしたけど、何を言ってるかあまり理解されなくて悲しかったことを思い出したけど。
筒井さんの訳は感心するばかりで、ケチのつけどころもないのだが。
と言いつつ、せっかくだからケチをつけるけど。
Macskaさまも言ってるとおり、タイトルが。
http://macska.org/article/199
原題が「Gender Outlaw: On Men, Women, and the Rest of Us」なので、直訳で「ジェンダー・アウトロー:男性、女性、そして残りのわれわれ」でよかったのでは。
「隠されたジェンダー」だと、ボーンスタインの述べる流動的なジェンダーというより、何らかの固定的なジェンダーが隠されていた、という語感を感じる。
もっとも、筒井さんは、「性別無頼」を提案したが、編集の方から、没にされたとか。
いっそ、「性別番外地」だったら、いけたかも??
あと、翻訳のことではないけど、原著にあった、ボーンスタインの幼少期からの変遷の写真が掲載されていないのも残念。
写真付きの原著は、ボーンスタインの個人的独白の印象が強いのだけど、訳書のほうは、活字だけのため、ちょっとお固い理論書のような印象となっている。
とケチをつけたが、名著、名訳であることは間違いないので、ぜひ多くの方に読んでいただきたい。
最後に、増刷改訂を祈念し、脱字指摘。
P87、3行目
>皆無であた。
(皆無であった。)
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Gender Outlaw: On Men, Women and the Rest of Us
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