神戸家裁尼崎支部戸籍変更事件却下理由

第3 当裁判所の判断


1件記録によると、次の事実が認められる。
((1)〜(6)まで事実関係の確認がされていますが省略)


申立人は、法3条1項が定める性別の取扱いの変更の審判を求める
ことができる性同一性障害者の要件のうち、3号の定める「現に子
がいないこと」を要件とするのは、憲法13条及び14条第1項に
違反して合理的根拠がないため適用すべきではないから、その他の
要件を満たしている申立人についての性別の取扱いの変更を認める
べきであると主張する。
そこで、法が3条1項3号にいう「現に子がいないこと」を含め、
各要件を求める趣旨について検討する。
性別は、その人の人格そのものに関わる重大な事柄であるとともに、
家族関係を含む社会秩序への影響も大きいことから、性同一性障害
者についての性別の取扱いを変更するには、法3条1項1号から5
号までに定められた各要件をすべて満たすことが求められている。
同条項1号が20歳以上であることを求めているのは、性別の取
扱いの変更は不可逆的なものであるため、本人の慎重な判断が必要
であり、また、「性同一性障害に関する治療のガイドライン
においても、第3段階の治療(性器に関する手術)への移行するた
めの条件として20歳以上であることが求められていることなどが
考慮されたためである。同条項2号は、現に婚姻をしている場合に
性別の取扱いの変更を認めると、現行法秩序では予定していない同
性婚の状態が生じてしまうため、現に婚姻をしていないことが求め
られたものである。同条項4号は、性別の取扱いの変更を求める以
上、元の性別の生殖能力が残っていることなどは妥当でないため、
生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること
が求められたものである。同条項5号は社会生活上の混乱が生じる
可能性があることを考慮して、その身体について他の性別に係る身
体の性器に係る部分に近似する外観を備えていることが求められた
ものである。
そして、同条項3号に現に子がいないことを求めているのは、子
があるのに性別の取扱いの変更を求めると、「女である父や男であ
る母」が存在することなり、これまで前提としてきた「男である父
と女である母」の概念に変更を生じさせ、父母の属性と男女の性別
の不一致が生ずることになり、子に心理的な混乱や不安をもたらす
などして子の福祉を害したり、親子関係に影響を及ぼすおそれがあ
るからである。確かに、子が父又は母の性別の取扱いの変更を受容
していたり、親子の交流が希薄であるなど、子の福祉を害するおそ
れや親子関係への影響が直ちに具体化するとはいえないような場合
もありえなくはなく、このような場合には家族秩序に対する影響は
少ないともいえる。しかしながら、家庭秩序に対する影響の程度を、
子の意向や親子の交流の程度に関わらせて個別の事案ごとに判断す
ることは、かえって子の心情や親子の交流に影響を与えることが懸
念される場合があり、相当とはいえない。
そうすると、同条項第3号が現に子がいないことを要件として求
められていることには、他の要件と同様に、十分な合理的根拠があ
るものというべきものであるから、同条項第3号の要件があるため
に、これを満たさない性同一性障害者の利益が制約されるとしても、
そのような規制が立法府裁量権を逸脱し、著しく不合理であるこ
とが明白であるとはいえない。したがって、同条項3号の要件が憲
法13条及び14条1項に違反するとはいえない。


以上によれば、申立人は性同一性障害者とは認められるが、法3
条1項3号の要件を満たさないことから、その他の要件を検討する
までもなく、性別の取扱いを変更することが認められないため、本
件申立は理由がないから却下すべきである。
よって、主文のとおり審判する。