性同一性障害を生きる――小幡直輝さん「…だけども僕たちの存在を認めてほしい」


注 by AJ
性同一性障害の人は、日本に10万人近くいると思うが、戸籍の性別を変えた人はせいぜい1,000人程度だと思います


現時点で主たる医療機関受診者は約5000人。
戸籍性別変更者は2006年12月末時点で326名。


性同一性障害を、TS,TG,TVに分類するのも、医学的理解とは異なる。
以下貼り付け。


brain news network
http://www.bnn-s.com/bnn/bnnMain?news_genre=17&news_cd=H20021023456
性同一性障害を生きる――小幡直輝さん「…だけども僕たちの存在を認めてほしい」 前編
 

胸が膨らみ生理が始まった時、「世の中は終わったと思った」。


 「僕はアダルトビデオも見るエロおやじです」――屈託なくそう話すのは、帯広市で有限会社を営む小幡直輝さん(32)だ。背こそ高くはないが、肩幅が広く頑健な体型、さらに短く刈った髪型は、腕っ節の強い印象を与える。

 小幡さんの話しぶりはイメージに違わず歯に衣着せぬものなのだが、体の性と、心の性が一致しない「性同一性障害」である。

 小幡さんは身体こそ女性だが、心(頭)は男性だ。そのため、身に付ける服装は男性のものだし、女性に好意を抱く。このように身体的には女性であるが性自認が男性のケースをFtM(Female to Male)、小幡さんと逆に、身体的には男性だが性自認が女性である場合はMtF(Male to Female)と呼ばれている。

 かつてアイドルの上戸彩は、テレビドラマ「3年B組金八先生」に出演、性同一性障害のため、周囲の偏見に苦悩する生徒・鶴本直を演じ、多くの視聴者に「性同一性障害」という疾患を知らしめた。

 だが、小幡さんは言う。

 「僕たちのことを理解してもらおうとは思っていない。なぜなら自分でも、なぜこのような状態で生まれたかわからないから。…だけども僕たちの存在を認めてほしい」

 小幡さんは1974年、釧路管内白糠町の家庭に生まれた。家族は両親と姉1人。

 “異変”に気が付いたのは小学生の時だった。「いずれ男性器が出てくると思っていた」が、小学5年生頃に胸が膨らみ、生理になった。

 その時、小幡さんは「世の中は終わったと思った」。

 以下、次回に続く。

http://www.bnn-s.com/bnn/bnnMain?news_cd=H20021023458&news_genre=17
性同一性障害を生きる――小幡直輝さん「…だけども僕たちの存在を認めてほしい」 中編


 母親に告白すると「じゃあ、あんたはレズなのかい」。

 小幡直輝さん(32)が身体的な性と頭(心)で自認する性の相違に気が付いたのは、小学生の頃だった。

 「いずれ男性器が出てくると思っていた」が、小学5年生の頃には胸が膨らみ、生理になった。しかし、心は男。にもかかわず、女の子であることを演技するのはストレスだった。そのうえ小幡さんは、いじめにも直面していた。

 「自分で言うのも何ですが、僕は勉強ができました。だから先生には何も言わせない。逆に授業中は『そこは違う』『それは変だ』などと先生に口出しをしていました。そんなことから担任が僕をいじめなさいとほかの生徒に指導し、4年生から6年生まで集団でいじめられていました」

 「自分が女の子を演じることはストレスになるし、生理が始まった時は世の中が終わったと思いました。とりあえず、(男である)自分を隠そうと考えましたが、いじめられていたので誰にも構われず、かえっていいやとも思っていました」

 小学生時代は男の服、中学生時代はセーラー服だったがスラックスも認められていたため、スラックスをはき、行事がある時はガクラン(詰襟の男子学生服)を着た。

 そんな小幡さんを周囲が「おかしいな」と感じたのは中学3年の時だった。好きな女の子ができたことから、レズにみられたという。野球や空手をするスポーツ少年だったが、周りの目には“女を好きになる女”と映ったためだ。

 「レズ」とみるのは友だちばかりでなかった。

 「やんちゃな子ども」と思っていた母親に「自分は体と心(の性)が違うと言ったら、『じゃあ、あんたはレズなのかい』と言われました。結局、母親に理解してもらうまでには4年の歳月を費やしたという。

 高校進学後、けんかで2度の無期停学処分を受け、入学間もなく退学。「けんかが強ければ、同級生に何も言わせないで済む。いま振り返れば、心と体(の性)が一緒だったら、あそこまで暴れてはいなかったと思います」

 高校を中退した小幡さんは実家から追い出され、帯広市で働いた。16歳になり、周りの人たちにカミングアウト(告白)するようになった。

 「テレビや世の中では、オカマやオナベという言葉を簡単に使いすぎる。それを売り物にしている芸能人もいますが、オカマと呼ばれ、いじめられる人がいることを真剣に考えれば、安易に使うことはできないはずです」

 「性同一性障害」という言葉の意味を理解する人は年々増えている。その一方、この疾患は悩んでいる人の数と同じといっても良いほどいろいろな形態があることは、あまり知られていない。心は男性で女性に好意を抱く小幡さんのようなケースから同姓愛者などさまざまだ。

 性同一性障害は、次のように3つに分類されている。

 トランスセクシュアル(transsexual)

 自身の身体の性と心の性の不一致を最も強く感じている人たち。一致しないふたつの性を合致させるため、性別適合手術(性転換手術)を望む。

 トランスジェンダー(transgender)

 身体とは反対の性での生活を願いながらも、性別適合手術までは望まない人。

 トランスベスタイト(transvestite)

 身体の性と違う服装をする異性装者で、「女装者」や「男装者」のこと。心の性との不一致がないため、「性同一性障害者」と区別されるが、異性装をすることで、性の違和感を解消しているケースもある。

 小幡さんは自身をトランスジェンダーに近いトランスセクシュアルと分析している。

 「父は何も言わずに僕を見守ってくれました。父からは『成人式の時は振袖を着て写真を撮ってくれ』と言われました。父は僕が19歳の時に亡くなり、その言葉が遺言になったのです」

 小幡さんは現在、周りの人たちに男性として受け入れられて生活をしている。それでも身体的な性との違和感は解消できない。4年前から2週間に1度、ホルモン注射を続けており、来年の4月には乳房除去手術を予定している。


http://www.bnn-s.com/bnn/bnnMain?news_cd=H20021023461&news_genre=17
性同一性障害を生きる――小幡直輝さん「…だけども僕たちの存在を認めてほしい」 後編


戸籍の性別変更は法制化されたが、その条件は厳しい。

 2003年7月10日、衆議院本会議で与党3党による議員立法性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」が全会一致で可決し、成立した。

 この法律は、心と体の性が一致しない性同一性障害の人が、家庭裁判所の審判で戸籍の性を変えられるというものだ。

 審判では下記の5つのいずれにも該当することを条件としている。

 ・20歳以上であること

 ・現在、婚姻をしていないこと

 ・子がいないこと

 ・生殖腺がないことまたは生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること

 ・身体の性器が移行する性に近似する外観を備えていること

 帯広市で有限会社を営む小幡直輝さん(32)は、身体的な性は女性、心(性自認)は男性だ。4年前から同市の病院で2週間に1度、ホルモン注射を打っている。来年4月には乳房切除の手術をする予定で、いずれは性別適合手術(性転換手術)を望んでいる。

 「男性ホルモンの注入は、女性を更年期にするようなもの。注射する期間を空けてしまうと、体温調整ができなくなったり、めまいがします。しかし、胸がなくなれば、温泉に行ける。(胸を隠すため)猫背にもならなくていい。Tシャツも着ることができる。戸籍も変更したい」

 それでも戸籍の性別変更の条件は厳しい。現状では希望者の一部しか申請できない。

 「移行する性の外性器に類するものにするためには、多額の手術費用が必要だし、身体的な問題で手術ができない人もいる。性同一性障害の人は、日本に10万人近くいると思うが、戸籍の性別を変えた人はせいぜい1,000人程度だと思います」

 小幡さんは取材の際、名前や顔写真の掲載に応じている。その理由を「僕はこの先、10年、20年後、(性同一性障害の)子どもたちが生きやすい環境をつくるために活動をしています。だから名前も顔も出すことが必要です」

 カミングアウト(告白)してからすでに15年余りが経過した。家族はもちろん、周囲の人々も小幡さんのことを男性として認めて接している。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 10月29日午後1時30分から十勝管内音更町の「共栄コミュニティーセンター」で講演会が開かれる。講師は「FTM日本」を主宰する虎井まさ衛氏、テーマは「『性同一性障がい』ってなあに?」。

 参加費は1,000円で前売券あり。問い合わせ、申し込みは主催する「COMらっど」十勝事務局の小幡直輝さん(TEL080−5588−2823)まで。

※FTM 身体的には女性であるが性自認が男性のケースをFtM(Female to Male)、逆に、身体的には男性だが性自認が女性である場合はMtF(Male to Female)と呼ばれている。