性指向と性志向

日本のセクシュアリティの世界では、sexual orientation は「性志向」ではなく「性指向」ないしは「性的指向」と表記するのが正しいとされる。
実際私も、そのように使い、「性志向」を誰かが使っていると突っ込みを入れてきた。


その理由として「志向」というのは「こころざす」ものなので、自分の意志、気持ち、で、好きになる相手を決めているという意味になるからよくない、ということがいわれる。


すなわち、同性愛批判に対して、「自分の意志で、同性を好きになっているのでは、ありません。もともとそうなんです」みたいな、同性愛を、生物学的に決定された、生得的なものとしてとらえることで、同性愛批判に反論するという意味が、「性志向」でなく「性指向」を使うことにこめられているのだと思う。


この反論ロジックの是非はともかく。


ふと、
「指向と志向にそんなに必死になるほど意味の差があるのか」
と疑問に思った。
一般ピープル的には指向と志向の違いなどまず意識しないし、広辞苑を見てもたいした差はない。


それにそもそも「指向」という言葉は「指を向ける」という漢字である。
「指を向ける」という行為は、いくつかの選択肢の中から、自分の意志でどれかを選び意思表示するときの動作である。
すなわち非常に意識的で、能動的で、さまざまな情報を織り込んで判断する作業である。
単純な本能的な動作とは違うのである。


そう考えると「性指向」という言葉も、生物学的に決定された、生得的な、性的特徴を示す用語として本当に適切なのかどうか疑問が残る。


そもそも「性志向」ではなく「性指向」を使いましょうキャンペーン、誰が始めたんだろう。
謎。