2005.5.11. 朝日新聞 声


あるべき自分 胸はり堂々と


看護師 岩根樹 (埼玉県北本市 34歳)


 私は昨年、性同一性障害GID)と診断された。心は男性、体は女性だ。生まれもった体への違和感、親からもらった名前の嫌悪感、周囲からの女性らしさの強要・・・。それらに対処するすべを模索し、自分をひた隠してきた。
 だが、GIDが広く知られ、治療ガイドライン制定や性同一性障害特例法施行など、この10年の動きには大変勇気づけられている。私は今春、看護師免許を取得した。幸いにも理解のある病院で、「心の性」である男性として採用され、新たな人生を踏み出せた。
 世田谷区議、上川あや氏らの活躍もあり、認知度も上がったが、一方では「性的マイノリティー=異常」という認識が依然として存在し、中傷を浴びる現実があるのは否めない。
 外見と戸籍とのギャップにより受ける苦痛は、当事者でなければ分からないだろう。ひっそりと息をひそめている仲間がどれだけいるのか、胸がつまる。私は恵まれた環境にいる。だからこそ、あるべき自分として堂々と胸をはって生き、「性的マイノリティー=異常」という図式をなくす力添えになりたい。