bowdlerism(ボウドラリズム)


本日、日刊スポーツの教科書検定の報道で以下の記載。


>学習指導要領が「妊娠の経過は取り扱わない」と規定しているため「性交」は「性的接触」に置き換えられた。教科書会社からは「実態は教科書より進んでいる」と疑問の声。


それで思い出したのが、「bowdlerism(ボウドラリズム)」という言葉。
Definition of bowdlerism

これは、ビクトリア文化全盛の19世紀の作家、Thomas Bowdlerに由来する。
http://21.1911encyclopedia.org/B/BO/BOWDLER_THOMAS.htm

彼は「家族で安心して読めるようにする」といって、「不適切な」言葉を一切排した、シェイクスピア本である、「家庭版シェイクスピア」(1818)を執筆。


そこから、ボウドラリズムとは、下品な言葉を上品に全て言い換えることをいう。
「売春婦」は「転落した女」、
「売春」を「社会悪」、
「性病」を「社交病」などのように。


ちなみに、かのフロイトも、このボウドラリズムの影響を受けたらしい。
「夢判断」(1900)で、夢は性的願望を別の象徴に置き換えるとか(ヘビはペニスの象徴みたいな)いっているが、それも、単なるボウドラリズムのパクリらしい。
イギリスの流行がちょっと遅れて、ウィーンに伝わった、そんな感じである。
(以上参考文献:「ヴィクトリア朝の性と結婚」)

ヴィクトリア朝の性と結婚―性をめぐる26の神話 (中公新書)

ヴィクトリア朝の性と結婚―性をめぐる26の神話 (中公新書)


確かに、良く考えたら、フロイトの夢の話は矛盾している。
夢が無意識の表れというのなら、普段抑圧されている性的願望をそのまま夢に見そうなものである。
いちいち置き換えたりする面倒なことはせずに、誰かとの「性的接触」場面を直接夢に見ればいいだけの話だ。
わざわざ、夢の中でヘビとか見たりする面倒なことを無意識がするとは思えない。