ハリーベンジャミン学会報告:anniversary

annojo2003-09-11


8時半より学会開始。
学会会場は現在ゲント大学医学部のある、Het Pand。
強迫的幾何学模様庭園が素敵な場所であった。

で学会始まる。
27カ国約300名の参加。

Thursday 11th of September 2003:

08h30 – 08h45: Welcome / Introduction.
最初歓迎の挨拶、総理大臣が予定されていたけど、緊急の用事でキャンセルとのこと。
別の政府要人が挨拶をしたが、「TGの人権問題は重要。性別移行前の人のための臨時パスポートを発行しようという計画がある」みたいなことを言っていた気がする。

8h44 – 09h30: Presidential Address
Eli Coleman
コールマン会長の基調演説「transgenderの健康促進」。
「TG概念が古いものから新しいものにかわっている。
古いパラダイム
・性別2分類。
・true TS
・一次性、二次性TSへの分類。
・TV、TSの分類。
・Homo、hetero TSの分類。
・SRSをしないといけないという考え。
・パスにこだわること。たとえば不要な声パスの訓練、手術。
・SRS前の離婚。

古いパラダイムが廃れた理由。
・新しい科学的知見の集積。
・TG活動。
・TG identityの現れ。
・IS活動。
・ゲイ、レズビアン活動。

新しいパラダイム
・性別とはスペクトラムなもの。
ジェンダー表現はおのおのが自由にすべきもの。
・治療はさまざまなものから選択して行うもの。」

さすがコールマン様、全面賛成でした。

09h30 – 12h30: PLENARY SESSION:
The Transgender Phenomenon
Chaired by: Stan Monstrey and Eli Coleman

09h30 – 10h00: Epidemiologic-diagnostic viewpoint. - Friedemann Pfäefflin (Germany)
いろんな要因で、国によってTG人数データが異なるという話。
10h00 – 10h30: Anthropological-historical viewpoint - Vern Bullough (USA)
クリスチンジョルゲンソンがどうしたとか言う昔の話。
10h30 – 11h00: Diversity of psychosocial challenges, coping, and styles of gender-reassignment among transgendered peoples of Samoa,
Tonga and India -Pamela Connelly (USA)

ハバナ学会でも同じ話を聞いたが。
サモア(faafafine)では、母の賛成87.4%、父の反対19%。
インド(hijra)では、母の賛成36%、父の反対98%。
インドのヒジュラは、家族の理解が得られず悲惨とのこと。
ヒジュラは、助産婦にSRSをしてもらうらしい。費用が医者の半分だから。

11h00 – 11h30: Coffee break.

11h30 – 12h00: Psychodynamic viewpoint -Lin Fraser (USA)
TGの成長段階別の心理療法のポイント。
12h00 – 12h30: Biological viewpoint- Louis Gooren (The Netherlands)
分界条床核とか、いつもの生物学的原因論
これといって新鮮な話はなし。

12h30 – 13h30: Lunch

13h30 – 15h30 PLENARY SESSION:
Psychology / Counseling / Children and Adolescents
Chaired by: Richard Green

Debating DSM. Ken Zucker (Canada)
DSM反対論。
1.診断はスティグマ
2.平均でなければ病気なのか。
3.社会の問題を個人に押し付けるな。
4.西洋的価値観だ。
5.黒人が白人になりたいのも病気なのか。
6.同性愛の子供を病気扱いしている。
7.GIDとは同性愛を病気扱いするため別の言葉に置き換えたもの。
8.同性愛治療を保険適用させるための策略だ。
9.精神疾患でなく身体疾患にすべきだ。
10.DSMの疾患定義に当てはまらない。

DSM賛成論
1.保険適用される。
2.研究対象にしやすい。
3.Sigmaとは限らない。
4.治療への不要な苦痛が減る。
5.普通でないということは診断基準ではない。
6.「病気」議論は単純化しすぎ。
7.民族アイデンティティの問題とは別次元。
8.「子供同性愛」議論は単純化しすぎ。
9.性指向の問題とは別。
10.病気であると考えることで苦痛が減る。

提案
1.基準を変える
2.子供のGIDはなくす。
3.「苦痛」の定義を明確化する。
4.自我親和性、自我不親和性の概念を持ち込む。
5.DSM−Mental Disorderではなく、DSMPIL(problem in life)にする。(これは冗談でしょう。)

質疑応答は盛り上がる。
TGの人から、「子供のGIDはなくせ 」との突っ込みに、ZuckerとGreenが必死に「いろいろな理由から性別違和感で苦しむ子供」を治した経験を話し、必死に必要性を訴えるという感じだった。

A Comparative Study of Gender Identity Disorder in Children from the Netherlands - Peggy Cohen-Kettenis (The Netherlands)
A Long-Term Follow-Up Study of Prepubertal Children with Gender Identity Disorder - Vanessa Kaijser (The Netherlands)
Greenの研究では、こどものGID は、44人中1人が大人になってもGID
オランダでは、男77人中15人、女26人中11人が、20過ぎてもGIDであった。
Zucker(カナダ)では、男40人、女45人中、大人になっても、性別違和感が28%、SRS希望が、13%にあった。
大人になってもGIDの特徴は、受診時が比較的高年齢、診断基準一致項目が多い。

An Experience of Group Work With Parents of Children and Adolescents with GID -
Domenico DeCeglie (United Kingdom)
GID子供の、親へのグループ療法が有効という話。

15h30 – 16h00: Coffee break.

16h00 – 18h00: ABSTRACT PRESENTATIONS
Session 4: Legal Issues
Moderated by Jamison Green and Chris Uytterhoeven

会場に行くと、座長のJamison Greenは、かの超有名FTM activistのJames Greenではないか。
感激。
さらに、隣でしきりと法律薀蓄をしゃべりまくっている男の名前をチェックすると、Respect and Equality: Transsexual and Transgender Rightsの著者、Stephen Whittleではないか。
もう生きてて良かったという感じである。

で、自分の番が来て、発表しようと思ったら、原稿忘れてきたことに気づく。
また、やってしまった。
まあ、暗記していたので、何ということもないが。
特例法について説明。

会場は40人ばかりでそれほど大人数ではなかったが、さすがマニアぞろい。
鋭い質問ばかり。
Q ペニス形成術は難しい手術だが必要なのか。膣閉鎖は。(by Stephen Whittle)
A ペニス形成は2段階の第1段階のマイクロペニス形成でよい。膣閉鎖については不明。

Q 当事者たちは人権を訴えていたのに、要件が極めて医学的なのはどうしてか。
A TGの人権というより、「病気である性同一性障害者なので救済、保護してほしい」という訴えだったからではないか。

Q 子なし要件は誰のためにあるのか。離婚して相手が子供を育てて20年たった人でもだめなのか。
A だめだ。「only death of child」だけだ。小なし要件は子供のためにもうけられたといわれている。しかし、伝統的家族システムの維持という面もあるであろう。

Q SRS要件の反対論はなかったのか。
A 3年前にはあった。今回はほぼなかった。

Q 海外のSRSは良いのか。
A 特に問題はないと思われる。

終了後、Greenさんや、Whittleさんにご挨拶。
多くの人から、法律の英語訳を送ってほしいといわれる。

19h30 – 21h30: Poster Presentations
(with Belgian beer and delicacies)
ポスターは発表後の気の緩みと、ベルギービールで酔っ払い、よく見なかった。