Skoptic syndrome・スコプティック症候群

酒ばかり飲んで日記を書くと、脳みそが腐るので、今日は勉強。
2004年10月17日の日記で「睾丸切除のみ希望するもの」については少し論じたが。

「Skoptic syndrome」(スコプティック症候群)なる概念があるらしい。
日本では知られていないようなので、紹介。

ジョンマネーが1988年に命名
性的身体イメージの障害で、強迫的に、睾丸やペニスの切除を望むもの。
女性になりたいわけではない。

関連論文としては、 Colemanの論文あり。
リチウムが効果的だったとか。

Skopticにまつわるジョンマネーの薀蓄が興味深いので、以下翻訳。
「lovemap」75~76pより。

Skoptic syndromeは、18世紀に設立されたロシアのカルト的キリスト教組織Skoptsiから命名された。

ロシア語でskoptsiは去勢された雄ひつじを意味する。この組織は聖書の
「マタイ19:12結婚できないように生まれついた者、人から結婚できないようにされた者もいるが、天の国のために結婚しない者もいる。これを受け入れることのできる人は受け入れなさい。」
を文字通り解釈する。

(杏野以下訳注)
「For there are some eunuchs, which were so born from their mother's womb: and there are some eunuchs, which were made eunuchs of men: and there be eunuchs, which have made themselves eunuchs for the kingdom of heaven's sake. He that is able to receive it, let him receive it.」
を直訳すると、こんな感じ。

「母親の子宮から生まれたときから宦官のもの、人から去勢されて宦官になったものもいるが、天の国のために自分自身で宦官になったものもいる。これを受け入れることのできる人は受け入れなさい。」

(訳注終わり)

信者たちは、去勢を自らの救済のために行った。1771年、この組織の二人のリーダーの、IvanovとSelivanovは13人の信者が自己去勢をした罪で逮捕された。ふたりは有罪判決を受け、シベリアに送られた。Selivanovはシベリアから脱出し、この組織を自分が死ぬ1832年まで率いた。死んだとき、自らを「神の中の神、王の中の王」と宣言した。1874年まで、組織のメンバーは推定5000人で、1000人の女性もいた。男性メンバーは睾丸とペニスを切除しないといけなかったが、女性は乳房をつぶすだけでよかった。ロシアで違法とされたので、ルーマニアに逃げて組織を存続させたものもいた。最後のメンバーは1920年に死亡した。彼らの外科的行為を証明する医学写真もいくつか残存する。

 あとから考えると、この組織のリーダーだった、Selivanovは、自分自身が去勢への固着があったと考えられる。そのため、もっともらしい理屈付けとして、聖書を用いたのだろう。ただの去勢を宗教的儀式にすることで、自らを偉大なカリスマへと高め、「天の国のために、自ら宦官になった」信者たちを集めたのだ。