うらやすだより

第168回浦安ジェンダークリニック委員会(6/14)報告

 

 ●個別症例検討:3例

   ホルモン療法開始:  2名 承認

   ホルモン療法継続:  0名 承認

   ホルモン療法再開:  0名  承認

   乳房切除術   :  1名 承認(山梨大学

   性別適合手術  :  0名 承認

   第二次性徴抑制療法: 1名

     ( FTM 2名、 MTF 1名 )

   

   以上、3名が承認されました。

特例法制定時頃の議論

参議院法制局川崎氏。P92

また、性同一性障害者が生殖機能を喪失する前に精子又は卵子を凍結保存し、それを用いて生殖補助医療により子を持つことの問題も想定され得ないわけではないが、この問題は、どのような場合に生殖補助医療を認めるかということにかかわってくるものであり、検討が行われている生殖補助医療に関する法制度の問題として、それとの関連において、どう対処すべきか判断さることになってこよう。

 

 

 

大島俊之先生

P107-108

また、法理論的にも、「現に子がいないこと」という要件には重大難点があります。次のような事例を考えてみましょう。①独身のAが、未婚の女性Bに子Cを産ませたが、認知はしていませんでした。②Aは性同一性障害の診断を受け、性別適合手術を受け、戸籍上の性別を男性から女性に変更しました。(この時点では、Cを認知していないAには、法的な子がいないことになります)。③その後、AがCを認知しました。認知には遡及効がありますので(民法784条前段)、③の時点で行った認知は①の時点まで遡ってその効力を持つことになります。したがって、Aは②の時点で子がいたことになります。そうすると、Aは「現に子がいないこと」という要件を満たしていなかったことになります。この場合には、戸籍上の性別表記の変更は有効なのでしょうか、それとも無効なのでしょうか。この問題について、特例法は何も規定していません。

 

針間

P83-84

精子保存、性別適合手術、その精子を利用して子供を持つ、戸籍変更申し立ての順番の場合、戸籍変更は、その時点で子供がいるために認められません。しかし、精子保存、性別適合手術、戸籍変更申し立てですと、戸籍変更は認められます。そして保存後に保存精子を利用すれば、子供を持つことは可能です。そうすると戸籍の性別はどうなるのでしょうか。特例法は「現に子がいないこと」という要件であり、その後に子供を持つことを禁止しているわけではありません。ただ、「生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること」という要件もあります。結局、特例法はこういった状況を想定しないために、結論は今のところははっきりしません。

 

 

 

以上、川崎、大島、針間の議論を紹介したが、その後、子なし要件は未成年子なし要件に変更になったこと、FTMの子どもが嫡出子として認められたこと、という時代の変化があり、議論の再検討は要すると思う。

うらやすだより

第167回浦安ジェンダークリニック委員会(5/17)報告

 

 ●個別症例検討:5例

   ホルモン療法開始:  1名 承認

   ホルモン療法継続:  1名 承認

   ホルモン療法再開:  0名  承認

   乳房切除術   :  2名 承認(山梨大学

   性別適合手術  :  2名 承認(行徳総合病院、山梨大学

 

     ( FTM 4名、 MTF 1名 )

   

   以上、5名が承認されました。